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【経営者の志】株式会社ヤマナカ 代表取締役 髙⽥ 慎司さん

2020.03.09

経営者の志


株式会社ヤマナカ 代表取締役 髙⽥たかだ 慎司しんじ さん

宮城県⽯巻市幸町1-38
s.takada@yamanaka.co
https://www.yamanaka.co

異業種からの⽬線が鍵に 地元の海産物を世界へ
株式会社ヤマナカ

宮城県⽯巻市に本社を構え、東京・北海道・そしてベトナムにも営業拠点をおく株式会社ヤマナカは、2008年に創業した⽔産ベンチャー企業だ。「地元三陸の豊かな海が育む海産物を世界に届けたい」との思いからスタートし、主に三陸沿岸で養殖⽣産された⽔産物の加⼯・流通を⾏う。主⼒商品であるカキ・ホタテ・ホヤは⽇本三⼤漁場として知られる『⿂介類の聖地』三陸海岸の恵みを受け、安全性・品質ともに国内外問わず⾼く評価され、2019年4⽉現在では国内はもちろん、アメリカ・中国・シンガポールなど計11カ国への輸出も盛んだ。

株式会社ヤマナカ代表取締役の髙⽥慎司さんは、1990年から外資系保険会社にてリスクマネージメント・ファイナンシャルプランナーとして勤務。1996年から2001年にかけて行われた大規模な金融制度改革金融ビックバンにより、国内金融機関の護送船団方式が崩壊。その後生き残りをかけ銀行・保険・証券の3業態は統廃合などの再編が繰り返し行われ、金融機関は先行き不透明の時代に突入する。これを機に退社後の2007年、地元石巻市にて畑違いの水産業に転身。「もともと宮城県⽯巻市は日本でも有数の⽔産業が盛んな地域ですが、これほど豊富な海の幸に溢れているのに、外へ向けた積極的なPRがほとんどなされていない状況でした。例えば宮城県は生食用カキの生産量が日本一であるのにも関らず、石巻では催事以外、カキを大々的にPRする看板や、のぼりもほとんど見かけないんです」この状況に気付いたのも、異業種からの参入だったからこそ。地元の魅⼒と課題解決の⽷⼝を再発⾒し、奥様と⼆⼈三脚で⼿探りの中起業。「軽トラック1台からのスタートでしたよ」と当時を振り返る。相場が安定し、全体量が把握しやすい、将来に渡り持続可能な方法で養殖⽣産されるカキ・ホタテ・ホヤのみをメインで取り扱うことを決め、地域の漁師さんとの関係性作りなどに奮闘する⽇々。起業から2年目に、年商2億円を達成し、会社が軌道に乗り始めた⽮先、2011年に起こった東⽇本⼤震災によって⼯場だけでなく地域⼀帯が壊滅的状況に陥った。

全ては⼀歩、⼀歩の⾏動の積み重ね
震災後から会社が成⻑する軌跡

「がむしゃらに朝から晩まで毎⽇働きました。従業員も15名まで増え、会社としての売り上げも安定。ようやく軌道に乗ってきたと思っていた⽮先に、津波で全て失いました。工場も沿岸部で養殖していたカキやホタテも、取引先の⽣産者さんも家業を続けられなくなってしまった⼈がたくさんいて。従業員やそのご家族が無事だった事が幸いでした」⽬の当たりにした光景にショックを受け、再建を断念することも考えていたそう。震災前の活気のある⽯巻を取り戻したい。仕事の柱である漁師さん達⽣産者さんのため何ができるか考え抜き、震災直後の5⽉から動き出すことを決意。「みんなで⼯場を⽚付けていると、漁師さん達が“ヤマナカが動いている”と集まって来てくれたんです。地域⼀帯が壊滅的な状況でしたから、震災後稼働している会社も少なく、⽯巻市内の同業は私たちぐらいでした」しかしこの決断があったからこそ、今までお付き合いのなかった⽣産者さん達と繋がることができたと髙⽥さん。「当時はとにかく、何としてもやり切ろうという使命感で動いていました。⽣産者さんと⼿を取り合い、激励し合いながら、2012年4月には震災後初の収穫までこぎつけました」1⽇1⽇を必死に駆け抜け、あっという間に3年が経った頃。従業員も30名となり、赤字を計上した2011年から一転して売り上げもV字回復を遂げた。しかし会社として嬉しい反⾯、営業、仕入れ、事務作業まで全ての業務を⾃分で⾏なっている現状に、この先会社を磐⽯にしていくためにはどうしようという悩みにぶつかる。

そんな折りに出会ったのがEOのメンバーだった。「メンバーから例会に声をかけてもらい、交流の中で今まで得られなかった刺激を感じて⼊会を決めました」と話す。

会社を育てていく葛藤の転機となった
EO North Japanとの出会い

「⾃分が動けば現場は回るが、それでは本当の組織・会社ではない」という葛藤に苛まれていた折り、EOメンバーからの声がけがきっかけで2015年EO North Japanの第1期のメンバーとして加⼊したという髙⽥さん。「実は⼀度、EO以外の経営者が集まる組織に在籍していた時もあるのですが、⾃分の感覚とは合わず退会していた経験がありました」EO に出会いメンバーとの交流の中でEOの掲げる5つの価値観「TRUST ANDRESPECT 信頼と尊敬」「THIRST FOR LEARNING 学びへの渇望」「BOLDLY GO! 果敢なる挑戦」「MAKE A MARK 次代を創る」「COOL 格好良さ」が⾃⾝の考え⽅に合っていると実感。社内の⼈材の育成・会社の運営を考え新しくシフトしていこうというヒントを得たそう。
「EOで学んだことをきっかけにここ3〜4年で会社環境も⼤きく変わりました。今は⾃分が直接顔を出さなくても業務が回るようになってきています。当時は、いざ仕事を引き継ぎでバトンを渡した時は⼤変勇気がいりました(笑)。実際に売り上げが下がるシーンもあり、難しさを感じましたね。でも今思えば、その時勇気を必要としていた⾃分はちっちゃかったんだなと感じます」と振り返りながら笑顔。EOでの学びが、今の会社の成⻑や体制に反映され、現在は⽉に約2〜3週間海外に出張に出ている場合でも会社が回るようになり、⼈材が育っていることを感じるそう。「得た学びを⾃分のやり⽅に落とし込んで試⾏錯誤を繰り返して。あとはスピード感を⼤事に、⽬指している⽅向・越えるべき課題に向かっていく。EOはそれを教えてくれました」と話す。「今はとてもストレスフリー」と話す髙⽥さんの表情が印象的だった。

「ここに答えがあった」
例会、フォーラムは成⻑のための最強のコンテンツ

「例会やフォーラムに参加し、ここから持ち帰られるもの・気付けるのもは僕の中で計り知れないほどの価値がありました。今の⾃分や会社の成⻑にとってかけがえのないものになっています」と髙⽥さん。経営者同⼠で会社のことを話す・相談し合う環境⾃体がとても貴重な中で、安⼼してコミュニケーションが取れる環境が整っているのもEOの魅⼒の1つだ。「お互いの勉強や相談の過程で⾃社のことを開⽰しているので、僕よりも僕の会社に詳しいメンバーもいるかもしれませんね。逆に他の会社もそう。参加者全員が“成⻑したい”と⾔う前向きな姿勢で参加し、意⾒を交換し合う場であるため、安⼼して話すことができたんです」と、EOで学んだことを会社へ落とし込んでいった。

コーチという視点での学び
EO アクセラレータプログラム

EOへ加⼊後すぐのタイミングで、EOへの加⼊条件でもある「年商1億円」を達成するためEOメンバーから経営を学び事業を加速させるプログラムで、コーチの打診が合ったという髙⽥さん。この経験によって新しいインプット・アウトプットができ、会社の成⻑に繋がったと振り返る。「チームを任せてもらい、東北各地から集まってくるメンバーと話す中で、⾃分の会社のことを振り返る場にもなりました」その都度、その都度発⾒があり⾯⽩かったと話す。

⽣産者と共に⾛り続ける今
そしてさらに先の三⽅よしを⾒据える

EOに加⼊したことで、国内だけではなく海外でのビジネスチャンスも広がった。震災後特に⼒を⼊れて来た海外展開も軌道に乗り、年商は2013年4億2,000万円から2014年9億5千万円、2015年11億4千万円、2016年には12億円を達成し、右肩上がりの成⻑を⾒せている。そこには、⾃社だけではなく、⽣産者(漁師)・消費者、さらに地域や⽔産業全体のことを考えた三⽅よしを実現するための想いが込められていた。

「良質の⽇本・三陸ブランドを世界へ届ける」をテーマに、農林⽔産省の⽔産物重要輸出品⽬にトップに躍り出ているホタテを中⼼に展開し、細かなマーケティングの元、生産者と近い貿易と、最新の機械を導⼊した⾃社⼯場での⽣産・管理で効率化を図り、鮮度・スピード・価格を実現。既計11カ国に登る諸外国への輸出を⾏い、既存の仕組みと新たなビジネスモデルの共存として、各国際的認証も取得。国際的な衛⽣基準の1つとなっている⽶国FDA HACCP認証の取得や、海洋管理協議会の厳正な環境規格に適合した漁業で獲られた⽔産物にのみ認められる、「イギリスMSC(Marine stewardship council)」のホタテCoC認証(流通加⼯段階認証)を取得した。さらに、海洋環境や⽣態系・労働環境の社会的影響に配慮した養殖業を認定する国際的に著名な⽔産エコラベルの1つ「オランダASC(Aquaculture stewardship Council)」のマガキCoC認証も取得。⽇本でASC認証を取得しているのは4⿂種8⽣産団体のみという数少ない認証も取得。⽣産者へも利益が還元され、消費者へも⾼品質な商品を提供するプラスの循環を⽣み出そうと、今なお邁進している。
また、宮城県産カキの知名度向上のため「Miyagi Oyster」というブランドを⽴ち上げ、海外市場でのブランド構築及びシェア獲得にも努めている。この取り組みが広く評価され、2017年・2018年度の経済産業省JAPAN BRAND 育成⽀援事業にも採択され、その活動が広く評価される。2019年12月には輸出に取組む優良事業者として東日本で初となる農林水産大臣賞を受賞した。

さらなる成⻑のための課題
今後の展望と⽬指す場所

震災から9年⽬となる2020年。⾃社の成⻑へ直結する、⽔産業界の産業内部に残る課題を解決する⼿段としての輸出を軸として、販路拡⼤を進める他、収穫時期の再考やカキ養殖及び加工などの人材不足の問題を解消する⼿⽴ても考案。その結果提携⽣産者の所得が増加し経済波及効果、地域事業者との連携がより円滑になるプラスの循環と強固なグローバル市場を構築し、次世代へ繋ぐことをミッションに次のステージに向かう変⾰期の波を渡るヤマナカ。「今までも1つ1つ、⼀歩⼀歩の⾏動の積み重ねだった。これからもMARINE×INNOVATIONを掲げ、サスティナブルな流通の仕組みを作るべく挑戦を続けていきたいですね」EOとの出会いがもたらした化学反応と、髙⽥さんのマインドが追い⾵となり、宮城県そして⽇本の⽔産業界を新しいステージへ運んでいく。

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