【経営者の志】株式会社ミライデザインワークス 代表取締役 小島 英弥夫さん
2019.12.20
経営者の志


株式会社ミライデザインワークス 代表取締役 小島 英弥夫 さん
一級建築士、リノベーションプロデューサー、TEAMDIO代表、DIOJPN代表
宮城県仙台市太白区長町7-12-4 DIOSS長町南
ojima@mirai-designworks.jp
https://www.mirai-designworks.jp
ストーリー型建築がまちを元気にしていく
株式会社ミライデザインワークス
宮城県仙台市を拠点として、現在東北を中心に活躍の場を広げている株式会社ミライデザインワークスは、建物(ハコ)を作るだけではなく「コミュニティが生まれるストーリー型建築」を得意としている。同社社長の小島英弥夫さんは仙台生まれ仙台育ち。大学卒業後15年間、大手工務店の設計士・営業所長として住宅建築に携わっていた。トップ営業マンとして成績を上げる中、2011年の東日本大震災をきっかけに価値観が激変。「震災や津波で住まいを失った人が溢れる中、公共施設の修繕も混み合い建築関係の職人は深刻な人手不足でした。注文をいただいても着工できるのは2年後。困っている人がいるのに毎日注文を断り続けている自分は一体…と、現状に疑問を感じていました」と当時を振り返る。震災のボランティア活動をする中で、夜まで打ち合わせができる場所が欲しいと思い立ち、「職人さんもいないし自分たちで作ろう」と、仲間たちと共に作り始めた。そうしている内に、初めは工事が目的であった活動が、集まった人同士のコミュニティの場になっていき、みんなで一緒に作り上げることの楽しさを実感。「参加型」のものづくりのヒントを得る。これらの経験とEO(Entrepreneurs’ Organization)との出会いをきっかけに、2014年に株式会社ミライデザインワークスを設立。住宅や空き店舗、倉庫などのリノベーションやリフォーム、建築相談、土地探しからショップ看板やロゴ制作などのデザインワークの他、ストーリー型建築・参加型リノベーションDIOを行なっている。中でも、共感した人が集まる仕組み、共感の輪を広げプロモーション・ブランディングをトータルで行うストーリー型建築・参加型リノベーション事業は今注目を浴びている。
共感コミュニティ作り
建築×コミュニティビルディングを実現する建築部隊
チームDIOとは
DIOとはDo It Ourself(私たちで作る)の略語。「この言葉は、ある現場で仲間と共に住民参加型の手作り建築をしていた際に『これは DIYじゃなくて、DIO(Do It Ourself)だ』と盛り上がったことをきっかけに生まれました。以降は自分たちの建築スタイルをDIOと呼んでいます」と小島さん。DIYよりももっと自分ごとで互いの距離が近い表現だ。
ミライデザインワークスは場・空間を作る設計チームであり、チームDIOはそれに共感・賛同するメンバーがジョインしてきてできたコミュニティビルダーだ。素人・プロが一緒になって参加型の建築やリノベーションを行うスタイルで、人と情報が交流する「拠点づくり」や、コミュニティ・雰囲気作りを、建築設計を軸に仲間や工事を依頼する「発起人」と共に作り上げる。「人が集まる場所」作り「楽しさが生まれる仕掛け」を盛り込み、計画から施工に至るまで、発起人や地域の人々を巻き込んだワークショップを企画することで、新しいコミュニティの創出を目指し、想いを発信していくサポートをする。
現在はDIOのチームメンバーも増え、大工以外にもクラウドファンディングに詳しいメンバーやデザイナーなど大工以外にもそれぞれ得意分野を持つユニークな仲間が集まり、より豊かな視点でチーム一丸となり、発起人の夢実現をサポートしている。2018年にはその活動が注目され、東北ソーシャルイノベーション大賞も受賞した。
工事期間中はゴールデンタイム
プロモーションも仲間集めも絶好の機会
参加者を巻き込み行われるDIOは、計画段階から建物を作る最中・完成した後全てに、ファンを作り育てる仕掛けが盛りだくさんなのが特徴だ。発起人の想いを参加者へ共有しながら、みんなで一丸となり大切に仕上げていく。その過程で発起人の想いも、参加者同士も自然と溶け合い、仲間意識が生まれる。その結果、建物が完成した後も、人が集まる「生きた建築」として町に溶け込み、親しんでもらえる場になる。さらにDIOには「失敗がない」。壁の塗りムラやちょっとした施工後も、味わいとなってその空間の表情となるからだ。失敗を気にしなくなるとその場の空気があたたまってきて、プラスのアイディアが勢いを増す。参加者それぞれがチャレンジしやすい空気感が生まれる。「工事期間中はPRの絶好の機会。“こんな取り組みをしています”と発信することで、さらに共感者や仲間を増やしていく。建物が完成する頃には、さらに人々の興味を引きつける存在に成長しています」
「建築は人生の節目に現れるんです」と小島さん。何かを始めようと建物を建てる時、暮らし方が変わる時、新たなコミュニティを創造しようとする時、そんな節目に、建築を建てて終わりではなく、さらにその先の活かしていくことを考えたい。建築もまちもみんなでつくる時代だと思います」と話す。
起業のきっかけ
EO North Japanとの出会い
「2013年、震災直後で建築ラッシュだったということもあり、工務店に勤める会社員として売り上げは右肩上がり。正当に仕事をして得た報酬も、震災特需と周囲から白い目で見られているような空気感が漂う。そんなストレスから家族ともすれ違いを感じるようになっていました」と小島さん。震災をきっかけに、自身の働き方について悶々とする日々。仙台のコワーキングスペースで今後について悩んでいた時、EO大阪のメンバーが東北支援のために同じコワーキングスペースに来ていたところに遭遇。「1人で壁に向かってないでこっちこいよ」と声をかけられたのがEOとの出会いであり、その後の起業を決断するきっかけとなった。「EO大阪のメンバーの東北復興への本気の想いに胸を打たれました。お金の寄付という瞬間的なものではなく、東北が本当の意味で復興していくためには雇用を生む起業家を育て、そのノウハウを大阪から東北に提供することが復興支援だ。と、熱い会議をしていたんです。ソーシャルイノベーションに飢えていた時に出会ったこともあり、とても面白い組織だと感じました」
人間としての成長を実感
EOアクセラレータープログラム
2016年にスタートしたアクセラレータプログラムは、年商1億円を達成するためにEOメンバーから経営を学び事業を加速させるプログラムだ。2014年に「一級建築事務所」として創業し営業をスタートしていた小島さん。思うように数字が伸びず、失敗も多く経験した。2016年に新しくEOアクセラレータプログラムが始まることを知り、プログラムに参加。「ビジネスマンが集まる学びの場やコミュニティは様々ありますが、EO North Japanは東北の課題解決のための動きや地域貢献をより真剣に考えているように感じました。志があり、社会的インパクトが魅力的。自分の性に合っていると感じました。それが決め手になり本プログラムへの参加や、年商達成後の入会を決めました」
プログラムでは「EOの5つの価値観」に沿った学びがあった。①ビジネスの世界では誠実であることが学びと成長に繋がる「TRUST AND RESPECT 信頼と尊敬」②最も貴重な財産は知識欲であり、仲間と人生のあらゆる側面の経験を共有して知恵と偏見のない心を醸成する「THIRST FOR LEARNING 学びへの渇望」③問題解決のため、新たな感動を味わうため世界を開拓していく「BOLDLY GO! 果敢なる挑戦」④習慣を打ち破ることを恐れず、自らの力で運命を切り開き価値を創造する「MAKE A MARK 次代を創る」⑤ 革新的であるべく最大限の努力をする「COOL 格好良さ」である。
「EOはとても面白い会議体で、月1回の活動で約8人グループになってそこにトレーナーが1人という構成で行います。このプログラムのルールは、アドバイス禁止、徹底した守秘義務、お互いの成功・失敗の経験をシェアする、自発的に学びを得るというものです。安心して自己開示ができる環境で、メンバー同士がお互いのエピソードから学びを得ます。また、事業計画書が書けても誠実さが欠けていたのでは成長できない。使命感を持ち取り組むことの大切さ、目標となる人を得ると経営者としてより成長できる、といったことをアカウンタビリティグループで学びました」
自身の考えをブラッシュアップ
視座が上がる貴重な環境
「年商1億円を達成している経営の先輩方や、自分が経験したことのない業界の人たちと直接会って会話をする、考え方に触れる貴重な場はとても勉強になりました。それと同時に、自分の中の変な先入観や挑戦する前から無意識にかけていたリミッターにも気付くことができました。やってもいないのに挑戦することに勝手に恐怖感を持っていたこととかね」とEOアクセラレータプログラムを振り返る小島さん。EO North Japanは自社の利益という狭い視野ではなく、地域活性化のためにという志に基づくため、より柔軟に視野を広く持つことができたそう。
小島さんはEOアクセラレータプログラムを始めて、試行錯誤を繰り返し3年目に年商1億円を達成。達成できるようになったのは「自分が何をしたいのか」が明確に見えてきたことがきっかけだった。
「プログラム入会2年目に、会長の清水さんに『エミーゴ(英弥夫)はこの事業でどんな価値を提供しているのか』と問われ、建築屋ではなく発起人の夢実現と、そこから繋がる地域を元気にすることだということに気が付きました。視座をググっと上げられたというか。これが一番大きかったです。ここでドリームビルダーというキャッチコピーが生まれ、私たちミライデザインワークスは単なる建築屋ではなく『夢実現屋』だと表現できるようになりました」と話す。その後はさらに、EO会員の西坂さんに「業務を整理整頓し、価値を分かりやすく相手に伝えられるように」という指摘を受けてこれを改善。この2つの気付きと実践で売り上げが大きく伸びるようになった。
そうしたところ売り上げが伸びるばかりではなく、DIOの活動は各方面でも取り上げられるようになり、SENDAI SOCIAL INNOVATION SUMMIT 2019においては、高齢者施設×地域コミュニティを実現した「マイムケア長町」で東北ソーシャルイノベーション大賞、Like(共感)賞をダブル受賞。マイムケア長町は、介護施設と駄菓子屋が一体となった施設で、地域の人々が工事に参加しながらコミュニティづくりをした。現在も消しゴムハンコ作りなどのワークショップを開催するなど、地域のコミュニティの場となり活気をもたらしている。
「以前は“地域のため・まちのため”という綺麗事では数字は伸びない、契約を取ってくる方が大事という風に考えがちでしたが、このプログラムに参加し視座を上げてもらい、自分のやりたい軸が定まったことで、人間として成長させてもらえることができました」と笑顔だ。小島さんは現在、本プログラムに3年関わっていたことを活かし、アクセラレータプログラムの世話役を担当している。
やりながら発見、進みながら成長
この繰り返しでこれからも柔軟に進化していく
今後のビジョンについて小島さんは、ミライデザインワークスの強みをさらにブラッシュアップし5つのサービス展開を見据えていると話す。TYPE①一般建築:新築、リフォームプランニング、店舗デザイン、内外装工事、看板ロゴマーク制作。TYPE②DIOビルディング:みんなで空間を作る(アイディアを出し、壁塗りや家具を作るなどのワークショップを行う)、みんなで共感を作る(空間づくりを共にすることでコミュニティを設計)。TYPE③一般建築×DIOビルディング:タイプ1とタイプ2を合わせた、ミライデザインワークスならではの工事スタイル。TYPE④DIOサポート:発起人をサポートするメニュー(ブランディング、プロモーション、商品開発)。TYPE⑤DIOアカデミー:共感をもとにコミュニティが生まれる、首都圏プロボノ受け入れ、学生インターン、企業支援、企業研修など。
「ミライデザインワークスもやりながら発見と成長を繰り返して、ここまできました。『何かを始めたい人』もそれを応援する人も、みんながワクワクする仕組みを作り、日本中が一歩踏み出しやすい空気になるよう、これからも活動していきたい。新しいことに挑戦したい人を全力で応援したいし、みんなでワクワクする体験とものづくりをしていきたい。DIOスタイルを普及して、ものづくりの楽しさがより身近なものになり、毎日が豊かになってほしい。自分らしくあるために、何かに挑戦することが楽しい時代。挑戦している空気感が、まちに溢れる時代を作っていきたいですね」
未来を見据える小島さんの目は輝き、生き生きとしている。DIOの視点から生きた建築を考える事業。これからもその成長に目が離せない。