About EOEO North Japanについて

チャプタービジョン「真善美」を語る

EO North Japan のチャプタービジョンである「真善美」。このビジョンはいかにして生まれたのか、そして東北からどのような未来を描くのか。ビジョン創りに深くかかわった、歴代の EO North Japan の歴代会長が語る、「真善美」のストーリーをお届けする。

Genuine Japan とは

「真実、偽りのない日本」の事
真善美とは「人間の精神が理想とする、普遍的な価値の在り方を示す 3 つの概念」である。

「真」
「善」
「美」

Point 01 東日本大震災から 10 年、チャプタービジョンを創る

チャプタービジョン創りは、2020 年春、6 期会長の折笠哲也を中心に、約 10 名の理事メンバーで進められた。
折笠は「それまではなかなかビジョンが決まらなかった」と振り返る。「東北は何のためにあるのか?という自問自答があった。上場を目指すなら東京に行けばいい、と考える人もいた」と打ち明ける。

ここで、EO North Japan 設立までの経緯を紐解いてみる。

EO North Japan 設立のきっかけは、2011 年の東日本大震災であった。震災をきっかけに、被災地・東北を何とかしたいと立ち上がった東北の起業家と、当時の EO 東京、EO 大阪のメンバーがつながり、EO 東北分科会が立ち上がった。EO 東京、EO 大阪の起業家たちは東北に毎月のように通い、起業家を講師に招いた勉強会を開催し、東北の起業家たちと語り合った。時には、東北の起業家が嬉し涙や悔し涙を流すほど、熱く議論を交わした。

実は EO 大阪のメンバーは東北の起業家とつながる前から、被災地に支援物資を配り、現地の方との対話を進めていた。メンバーの1人は震災翌日に東北入り。阪神・淡路大震災を経験したメンバーもいた。

当時中心になり東北と関わった EO 大阪のメンバーは東北で耳にした、「何が必要ですか?と言われるのは辛い」、「何もいらないから、忘れないでくれ」という一言が忘れられないという。

「僕らは何者か」

正義感だけでは、何もできない現実に直面した中で、EO 大阪のメンバーは議論した。そして「私たちは起業家だ。私たちにできることは、東北の起業家や経営者の応援をすることだった」という考えに行きついたという。東北の起業家たちと出会ったのは、まさにそう考えていたタイミング。そこから毎月1回東北に通い、勉強会の開催を重ねるようになったという。

そんな EO の先輩たちの応援があり、2013 年に分科会が立ち上がり、2015 年 7 月に EO の正式なチャプターとして、EO North Japan(当時 EO Tohoku)が設立された。ただ、東北には EO を経験したメンバーがいなかった。折笠は、「EO を経験した人が誰もいなかったゆえに、EO とは何か?がわからなかった。6 期目になって、だからこそビジョンを作ろうという優先順位は最も高かった」と話す。

EO 東京、EO 大阪の先輩を尊敬しつつ、「東北だからこそ掲げられる理想像」を込めたビジョンづくりがはじまった。

Point 02 そして生まれた「真善美」

「我々が目指しているものとは何か?」
「東北らしさとは何か?」

理事メンバーは考えを巡らせた。

ビジョン創りにあたり、それまでの議論の中で、1 つの方向性は見出していた。それは、「資本主義と社会意義のバランス」。お金を稼いで売り上げを大きくしていく考え方も大事だが、東北で起業した我々は、どのように社会に価値を返していくという考え方も大切にしていきたいという思いだった。

理事メンバーは会津若松で合宿を行った。ふせんに言葉を書きこみ、ビジョンの案を出し合った。

そして、理事の池田友喜から出てきた言葉が「真善美」だった。池田は高校、大学と弓道に打ち込み、高校時代は全国大会の出場経験もある。その弓道の目標こそが「真善美」であった。

弓道の世界の「真善美」

とは、

正しい射ち方で射られた矢は必ず当たること。

とは、

礼節を重んじ、自分の心と向き合うこと。

とは、

「真」と「善」が 1 つになった時、「美」が生まれる。

ということ。
正射必中。心を整え、正しい射法で放たれた矢は、必ず的にあたる。
その弓道の教えと、東北の経営者たちの志が重なった池田は、「これだ」と思ったという。

この言葉に齊藤良太が「Genuine Japan」という言葉を加えた。「Genuine」とは「本物の」を意味する英語。齊藤は「東北にこそ真実の日本がある、という考え方を込めた」と語る。

「Genuine Japan 真善美」

その場にいた理事全員が賛成した。それほどぴったりな言葉だった。

折笠は、「バチン、と決まった。それまで 10 年くらい、散々議論して決まらなかったことが決まった。その瞬間、すごいと思った。チャプタービジョンには、東北だからと言って悲観をするのではなく、東北が最高なんだ、東北から世界を変えてやろうという考え方が込めら
れている」と振り返る。

Point 03 「真善美」を現す「東北 IB イノベーションベース」

EO North Japan 設立のきっかけとなった震災から 10 年を迎えた 2021 年。9 月には折笠が実行委員長を務め、「人間復興から真善美へ」と題したメモリアルイベントを開催した。当初は 3 月に開催予定だったが新型コロナウイルスの影響でやむなく延期。それでも 9 月には東京から、大阪から EO メンバーが駆け付け、震災を経験した東北の起業家たちの熱のこもったプレゼンテーションを聞いた。

2021 年 7 月から始まった 7 期の会長は、齊藤良太が務めた。会長の任期を終えた齊藤は「『アクセル全開!』というテーマを掲げた 7 期はとにかく活動量を増やした。感覚値でいうと、過去の 1.5 倍くらい。中でも、東北 6 県で若い起業家を育成する仕組みづくりに力を入れてきた」と振り返る。

この 7 期、「真善美を現すもの」として取り組んだのが、「東北 IB イノベーションベースNExT10」の創設だった。IB は、2020 年に EO メンバーが徳島で始めた活動で、起業家団体である EO のメソッドを用いて、各地域の起業家を育てるプログラムだった。

そして EO North Japan は 2021 年、「東北 6 県全県で IB を立ち上げる」という大きなチャレンジを行う。東北 6 県で起業家によるピッチ大会を開催することになった。各県の大会運営のために、支部長を任命。支部長は登壇する起業家集め、会場の確保、行政機関や金融機関をはじめとする地域との連携などのため、各エリアを走り回った。

そして開催されたピッチ大会。6 県で合わせて 50 名の起業家や大学生が登壇し、EO North Japan 所属の起業家たちが本気で審査を行った。

審査の基準は「ロックかどうか」。事業契約や実務経験ではなく、「起業家が起業マインドを持ったロックな人物かどうか」を審査した。

起業家が、大学生が、思いを込めた 4 分間のピッチを披露。審査員の起業家たちも本気で審査し、フィードバックを行った。6 県の代表者が集まった決勝大会も大いに盛り上がり、累計の登壇者は約 50 名、観覧者は 500 名以上を数えた。ピッチの後に合わせて開催された交流会では、各県で様々な交流の輪が生まれた。
これだけ短期間で IB を立ち上げられた背景には、EO North Japan が日本の他チャプターに先駆けて始めた起業家を育成するアクセラレータープログラム(クオンタムリープ)の存在がある。
2015 年、EO North Japan(当時の EO Tohoku)に寄せられた義援金をもとに始まったアクセラレータープログラムでは、EO メンバーが年商 1 億円未満の起業家を本気で支援する。そして、アクセラレータープログラムを経て売り上げが 1 億を突破し、EO に入会するメンバーも毎年のように存在する。
まさに「起業家が起業家を育てる」という文化がEO North Japan には存在していた。
IB の企画を主導した西坂勇人は、「真善美はチャプター内に浸透させるというインナーブランディングの面と、対外的な発信という目的がある」と話す。「アクセラレータープログラムや IB はまさに真善美的なもの。この真善美的なものを国内外のチャプターに伝えていき、他のチャプターから学びたいと言われるようなことが起きればいい。North Japan のアイデンティティ、チャプター運営を伝えていきたい」と力を込める。
震災から 10 年の 2021 年に立ち上がった IB。「NExT10」という名称には「これからの 10年を創造する」という思いを込めた。「起業家が起業家を育てる」という文化を広げることで、東北の次世代を担うプレイヤーたちを生み出していく。

Point 05 「真善美的運営」への挑戦

そして 2022 年、8 期がスタートする。会長を務めるのは高橋巧。目指すのは「真善美の浸透」だ。「真善美的運営」にチャレンジする。高橋はこう語る。

「EO North Japan が何かを決める時のジャッジや意思決定に、『真善美かどうか』という基準を取り入れよう」ということ。そして真善美的な意思決定がなされた取り組みは、真善美的なものになると考えている」

高橋は、8 期が始まるにあたり、「真善美」を改めてかみ砕いた。「対義語を考えればわかりやすい」と話す。

EO の Mission、Ambition、Value

グローバル組織・EO の目的や価値観は世界共通だ。
Mission 「起業家が潜在能力を最大限に発揮するのを支援する」
Ambition(志) 「メンバーの人生に変革的な成長をもたらす」
Value(価値観) 信頼と敬意、学びへの渇望などの 4 つがある。
高橋は、「真善美を心掛ければ自分たちも成長する。それはEOが掲げる潜在能力を発揮するというところにつながる」と話す。

Genuine Japan Chapter Vision -Genuine Japan共生の美意識-

真 ⇄ 偽 人間として正しいのか
善 ⇄ 悪 独善 or 共通善
美 ⇄ 醜 美しい、ワクワク
6 期の折笠が創り、7 期の齊藤が「設計」したチャプタービジョン「真善美」。8 期の高橋が「定着」を掲げ、9 期会長の西坂が「浸透」を目指す。歴代の会長を中心に、4 か年に渡って引き継ぐ「真善美」のリレーは、EO North Japan の 10 期目の節目につながっていく。

「10 周年には大きなイベントをやらないといけない。日本中、世界中から起業家が東北に駆け付けると思う。それまでにチャプターのアイデンティティを作り、海外に発信したい」と西坂は語る。

東日本大震災を契機に、日本中、そして世界中の起業家の応援を受けて立ち上がった EO North Japan。東北の起業家たちは「真善美」を掲げ、東北から、日本、そして世界の未来を切り拓いていく。