Entrepreneurs' Organization North Japan

Update

【経営者の志】GCストーリー株式会社 代表取締役社長 西坂 勇人さん

2020.04.02

経営者の志


GCストーリー株式会社 代表取締役社長 西坂にしさか 勇人はやと さん

東京都江東区富岡2-11-6 長谷萬ビル 4F
https://gc-story.com/

労働集約型産業のIT化をプロジェクトマネジメントで
GCストーリー株式会社

大手企業やチェーン展開ブランドの店舗看板の新規設置・メンテナンスやデザイン変更のプロジェクトを、ITを使って一元管理する。日本各地に点在する看板屋とチェーン店。高所作業の許可を取らなければならない店舗、営業中は作業ができない店舗など、全てが同じ条件下で施工できるわけではない。一筋縄ではいかないプロジェクトにITを導入し、円滑に進むように管理するという看板事業が「GCストーリー」の始まりと言える。大規模なプロジェクトになると、1000店舗以上の看板施工を一斉に管理することもある。日程調整やリスクマネジメントをはじめ、看板職人に分かりやすいようにマニュアルを作成することや、チェーン本部との打ち合わせに出席するなど臨機応変に対応する。ITを使い効率的にプロジェクトを進めることに加え、こだわりの強い看板職人とコミュニケーションを取ることも重要になり、多種多様な業務が必要となる。

GCストーリーは、労働集約型産業のIT化をプロジェクトマネジメントで行うことをビジネスモデルの根幹としている。労働集約型産業は、人間の労働力に頼る割合が大きい。「意味があることじゃないとやりたくない」と言う同社代表取締役社長の西坂勇人さんはITを使い利益を追求することにやりがいを感じなかった。このビジネスモデルが生まれたのは、看板職人が現場で苦労している実態を知り「その人たちの役に立つことが出来たら」という思いが生まれたからだ。そこに端を発した事業は、店舗の新規出店・改装・メンテナンスなどのチェーン本部向けの看板関連施工を行う看板事業をはじめ、介護情報サイトの運営、企業向け介護離職防止支援サービス、入浴特化型デイサービスの運営も行う介護事業、太陽光・風力発電などの新規設置やメンテナンスを行う再生可能エネルギー関連事業、内装事業まで多岐にわたる。

無給で全国を回った。血の通ったビジネスモデル
マーケティングの基本は現場

東京都江東区富岡に本社を構えるGCストーリーは、2005年にサイベイト株式会社として創業。GCストーリー株式会社と社名を変更し、現在社員は約80人。宮城県の宮城教育大学を卒業した西坂さんは流通業界に就職し、ディスカウントストアの店員となった。その後看板屋に材料を販売する商社に転職し、新規事業として看板屋向けのウェブポータルを作った。この看板業界×ITを生かし独立。ウェブポータル「看板ナビ」は、日本全国に1万社ほどあるという看板屋のうち、現在4608社が会員となっている。全国の看板屋が続々と会員となり形になってきた時、西坂さんは強い違和感を覚えた。「これは看板屋さんの情報が載っているだけの名簿と同じ。心が通っていない人間関係のリストを作ることに何の意味があるのか」と考えるようになった。「だめだ。会いに行こう」と思い立ち、給料も無い中で日本全国の看板屋に直接会いに行くことにした。「お金が無かったので、車で寝泊まりしながら全国を3周した。看板屋さんと会って、ご飯をおごってもらったり、一緒に風呂に入ったりしながら現状を聞いた」と振り返る。看板屋は、元々近隣店などから依頼され看板を作るという、街の芸術家のような位置付け。クリエイティビティを商売としていたのに、大手の下請けなどで苦しんでいると知る。酒を酌み交わし、胸襟を開いて話をしていくうちに看板屋が好きになっていた西坂さんは、彼らのために何かしたいと思うようになる。「6次下請けでとても苦しんでいる話も聞いた。その人たちのために何ができるのかという視点で考えた。自分たちがチェーン本部に行って仕事をもらい、パートナーに依頼すれば、直接仕事の依頼が来る形に近くなり、業者として扱われない。この尊敬の念が回るビジネスの形が腹落ちしている」と西坂さん。GCストーリーでは、看板屋を「業者」ではなく「パートナー」と呼ぶ。「その人たちがいるから自分たちが食べていける」ということを大切にしているからだ。西坂さんのマーケティングの基本は現場。「自分で事業を作る時には、そこで何が起きているのか分かっていなければならない。このビジネスモデルも、全国の看板屋さんに会い、苦しみを知ったことから作ることができた」

お金に興味が無いのは天が与えてくれた能力
徹底的な本質志向

高校生の頃から、物事の本質について考えるようになった。進学校である仙台第一高等学校に入学した西坂さんは「高校とは何か」と考え始める。自分の人生は自分のもので、自分で選択していると自覚したのもこの頃。とは言え、「高校3年間は勉強以外のことばかりしていた」と西坂さん。宮城県教育大学に進むも、1年間は大学に行かなかった。しかし就職という言葉が見えてきた時「教育とは何か」と考えた。周りから明確な言葉は返って来ない。「就職すること」という答えが返ってきたこともある中、どの答えも本質について考える西坂さんは合点がいかなかった。結局、教師は人の人生に大きな影響を及ぼすと考え、自分にはできないと思い至り、教師の道には進まなかった。

明確な目標が無いまま流通業界に就職したものの、今度は就職とは何かと問い始める。世間から返ってくる答えは「安定」や「お金」だった。「昔からお金に興味が無い。これは天が僕に与えてくれた能力だと思っている。お金に囚われて何かが見えなくなることが無い」と言う西坂さんは、27歳の時に年収1千万円の引き抜きにあったが、けんもほろろに断った。「お金にこだわらないビジネスモデルを作るのが面白い。会社経営を上手くいかせることや給料をもらうことが、人間が生きていく目的にはなり得ない。目的は何かというところから始めないと本質を見失う。本質は幸福になること」
経営に関する基本的な考え方は、寒天のトップメーカー伊那食品工業株式会社の塚越寛会長と同じ、利益は残りカスだという考え。あくまでも利益を出すことが目的ではなく、結果として自然と出てくるものと捉える。「利益は、健康な肉体を保てば自然と出るもの。健康な肉体とは『人間的成長×仕組み×ビジネスモデル』だと考えている」と西坂さん。会社という多くの人が集まる場所では「人間的成長×仕組み×ビジネスモデル」が必要で、そこをバランスさせることが自身の役目だと言う。中でも人間的成長をとても重要としていて、内面の成長がないと幸せになれないと考える。

会社のみならず社会にも幸福の範囲を広げていく
企業理念に込めた思い

企業理念は「全従業員が幸福で調和し、取引パートナー・顧客に感謝される存在であり、人類、社会の調和に貢献すること」。これは企業活動を通し、社員全員のみならず関わる全ての人たちを幸せにし、同じように考える企業を増やして、幸せな社会を実現するという思いが込められている。「本質は幸福になること」と考える西坂さんは、幸福になることを経営の基軸に据えている。社員たちは、会社説明会や 4次~6次面接を経て、このGCストーリーの考え方に共感し入社してくる。社内制度も社員が幸福になるためにという考えを基に作られている。入社1年目の社員が先輩社員をメンターとして仕事や人生について学ぶ「アテンダー制度」、月に1度全社員が参加し親睦を深める「おむすびの会」などがある。

「会社の社員全員が、会社全体が良くなるにはどうしたらいいのか、全員が幸せになる会社を作るにはどうしたらいいのかと考える会社はとても良い会社になる。認識の主体を自分に置くのではなく、2人なら2人の関係に、会社なら会社全体に広げるなど、認識の範囲を拡大していくことで幸福になれると思う」と西坂さん。

幸福を基軸に組織変革
初の応募でホワイト企業大賞受賞

GCストーリーは、2019年度の第6回ホワイト企業大賞に初めて応募し、大賞を受賞した。社名に込めた「Growth for Contribution(成長と貢献)」を実践し、業績を上げるのみならず、「何のために生きているのか」と哲学を念頭に置き、社員の人間力向上を大切にし、幸福を基軸に管理型組織からフラット型組織に移行し個々の主体性を伸ばしていると評価された。これまでの経営スタイルには3つフェーズがあった。創業当初は会社に泊まり込み、目標達成を目指す体育会系。次に、会社の理念をトップダウンで浸透させる理念経営。そして役職・会議を撤廃したフラットな組織だ。フラットな組織に変革した理由の1つには、今後AIやロボティクスなどが進化し、仕事の8割が無くなると言われる中、社員が成長していくための能動的に働く環境作りという意図もある。時代の先を読み、また社員の幸福を考えた上での変革。今回受賞したことで、「社員たちは客観的に評価されたことで、自分たちはこの方向で間違っていないと自信を持つことができ喜んでいる」と西坂さん。本人はと言えば、「みんなが嬉しいことが僕は嬉しい」と笑顔を見せた。

これほどまでに社員を大切にしている西坂さんが忘れられない出来事は、ある年の忘年会でのこと。居酒屋で社員たちが酒を飲みながらお互いの1年の労をねぎらっていた。仕事上では厳しく接する時もあるが、お互いを尊敬し合い、大切にし合っていると見て取れるほど、社員全員が笑顔だったと言う。この全員が笑顔の状況を目の当たりにした西坂さんは「映画のフィナーレのように、愛が溢れている状況だった。認識の範囲拡大を社員全員がしたらこうなるという状況がそこに現れた気がした」と、とても幸せな気持ちになり、帰り道に1人で涙した。

「EO North Japan」との出会い
世界中に広がる起業家のネットワーク

EO(Entrepreneurs’ Organization)との出会いは知人の紹介。世界に約1万人のメンバーを有するグローバル組織であることや、世界的な起業家とのネットワークが持てることに興味を持った。ここで人間的成長がしたいと思い、EO Tokyo に入会し毎月フォーラムに参加していた。「年齢が近い方や、平均従業員が500人くらいで上場しているとか、大成功している方たちと月1回会って話すのは、学びになるし刺激になる。自分と違う視点を持つ起業家たちと話すことにとても価値を感じた」と言う。現在は EO Tokyo のフォーラムに参加しつつ、籍を EO North Japan に移している。

実は西坂さんが最初に起業した場所は自身が育った仙台。20年ほど前にITベンチャーを立ち上げていた。そんな自分のルーツがある東北、「EO North Japan」での講演会に呼ばれたことや、現在地域に注目していることもあり、EO North Japan に移籍し、現在はアクセラレーター理事を務める。「東北は組織の作り方が面白く、精神性の高い起業家が多いと思う。震災を経て、苦しいことがあって、なぜ自分が起業したのかという『WHY』が強い」
西坂さんが特に有用性が高いと感じている学びのプログラムの1つ、「フォーラム」。感情の機微まで理解するためオフラインで集まり、全員がアウトプットを求められ、それぞれの経験をシェアするというプロセスを通して多様性の中から学ぶもの。メンバーは「守秘義務」「ゲシュタルト・プロトコル」「自己責任」という一定のルールのもとで、1カ月の間に身の回りで起きた様々な課題やトピックを発表し合い、気づきや、学び、成長などに繋げる。「ルールを守り会話できることが良い。人間的にも成長していく。この繋がりが全世界にあり、EOの会員というだけで垣根なく仲間として接することができる。これは、世界中に仲間がいるということ」

人間的成長がビジネスの差別化にる時代
多様な視点で世界を見る

GCストーリーは現在年商30億円。今後の目標について、西坂さんの口から数字の話は出てこない。5年ほど前からGCストーリーの既存事業にはほとんど関わらず、現在は新規事業に注力している。デジタルトランスフォーメーションが広まったこれからの時代のビジネスには、スモールビジネスが良いと考えている。「起業家として、拡大していきたいという気持ちは理解できるが、それが正解なのかには疑問がある。拡大するにしても資本が強いところに持っていかれてしまう。インフラを理解すれば、スモールビジネスを作ることができる」それは例えば小さな田舎まちで循環型社会を作るためにITを使ってビジネスをするなど、地域でビジネスをすること。スモールビジネスは大企業のサラリーマンとは違う、人との関わりや学びがある。このスモールビジネスで重要になるのは、ビジネスモデルではなく「人」。これからの時代、一人一人の人間性が高まっていくことが重要になると言う西坂さんが立ち上げた新規事業は、人間的成長を促す研修やコンサルなどを企業に提供するもの。サテライトオフィスを宮城県女川町に作るなど、既に始動している。

現在は「自分は何をやりたいのか」「日本の企業がどうならなくてはいけないのか」「東北の企業がどうなるのか」について考える日々。「人間とは何だろう」と常に追求しながら、世界的なビジネスの動き、社会課題、スピリチュアルな話まで、興味があれば直接見に行くなどフットワークは軽く、多様な視点で世界を捉え、エッセンスを取り入れる。「世の中全体が幸福になるために、自分が持っている力を使いたい」と言う西坂さん。創業から15年、あの忘年会で見た映画のフィナーレのような状況を、会社のみならずコミュニティや社会に広げて行きたいという西坂さんの挑戦が、新たな世界を創り出していく。